押戻 「歌舞伎十八番」

歌舞伎十八番「押戻」の歴史

歌舞伎の話型の一つ、また荒事芸の一つといわれるもので、享保12年年に江戸中村座において、国性爺竹抜五郎という演目の中で、2代目市川團十郎が演じた曾我五郎が初だしではないかといわれています。

赤筋隈の主人公は鋲打ちの胴着、菱皮髷に三本太刀という迫力あるいでたちが印象的です。
竹の子、笠、蓑を身に着け、大きな青竹をかかえて登場する様は、なんとも大迫力です。

この押戻は悪霊や音量などが花道に入ってこようとするものを「押し戻す」というお話になっています。
現在は、鳴神、娘道明寺の最後に型によって登場することが多く、この押戻は1934年に市川三升が復活単独上演しています。

押戻で印象的な隈取、隈取とは何か?

歌舞伎では役者さんが非常に印象的な隈取というメイクをして登場することがあります。
これは役柄の善悪、性格などを表しているもので、歌舞伎独特の化粧法です。

太い筋の図案をえがきますが、この太い筋は筋肉や血管などを誇張して書いているものとされ、筋の入れ方、色などについては決まった型があります。

赤い色はパワー、勇気、若さなどを表すよいイメージ「陽性」のメイクです。
逆に藍色は邪悪な表現で、大悪人、亡霊などに利用されます。
茶は土蜘蛛等非道な悪の化身の役柄の際、利用される化粧です。

高下駄と竹の笠、太い青竹を持った荒事の姿が見もの

この押戻では、隈取に荒事のかつらと衣裳をつけて、高下駄に竹の笠、太く大きな青竹を持った勇者として役者が堂々と登場します。

荒れ狂い舞台に入ってこようとする妖怪、怨霊などを花道から舞台に押戻し、撤退させる演技を行います。
娘道明寺などの道明寺物といわれる演目の最後、幕切れに登場することが多い役柄です。

押戻で見られる日本古来の民族伝承

歌舞伎ではその演目が作られた当時、どのような時代だったのか、その時代背景を感じることもできますし、当時の庶民の方々の暮らし、着ているものなども見ることができますが、日本に古くから伝わる民族伝承などを知る事もあります。

押戻では、荒事を象徴する格好をして荒々しく、また力強く花道を登場しますが、この荒事を象徴する拵え(こしらえ)の一つが髷を結うのに利用する白い紙「力紙」です。

このルーツが民族伝承にあります。
相撲の取組前、力士は力水を利用し口を拭う時に利用するのが力紙ですし、荒舞などの山伏神楽に見られる力紙といい、その場所、人を清める、力を付けるという信仰に基づき行われてきたモノといわれています。

また押戻の衣裳には、背中に非常に大きな結び目の色鮮やかな羽二重(はぶたえ)の糸を束ね編んでいる仁王襷(におうだすき)が使われています。
この大きな襷は呪力を表すといわれています。

手に持っている青竹も露払いの役などに利用されるもので、悪霊を払う勇者がもつに相応しいものとして利用されているのです。