鎌髭 「歌舞伎十八番」

切っても切れない景清の首・・・不思議なお話

鍛冶屋四郎兵衛が修行者の快哲の首を鎌で切ろうとしますが、切っても切っても快哲が不死身で切れないという実に不思議なお話です。
鍛冶屋四郎兵衛は仮の姿で実は三保谷四郎、修行者快哲も実は景清です。

安永3年に中村座において4代目市川團十郎の初演とされていますが、この台本等が失われているため、この鎌髭という演目の初演詳細はわかっていません。

しかし明治43年、2代目市川段四郎、2代目市川猿之助によって竹柴金策の台本で復活しています。
これは桜田治助が作った御誂染曾我雛形(おあつらえぞめそがのひながた)の2番目大切が元になっているといわれています。

この時のお話は表藤太秀郷が髭を剃るとして平将門に鎌をあて実は首を切ろうとするという物語です。

この時の演目については湯清江が遺されています。
この一場面を浮世絵に書いた鳥居忠清(14世長谷川勘兵衛)では、今まさに俵藤太秀郷が鎌で平将門の髭を剃ろうと見せかけておいて、首を切ろうとしている迫力あるシーンがかかれています。

また快哲については11代目市川海老蔵が上演していますが、これは5代目市川團十郎の当たり役として知られている役どころです。

2016年七月大歌舞伎で市川海老蔵が演じた鎌髭

2016年「七月大歌舞伎」で、市川海老蔵がこの鎌髭を演じています。
市川海老蔵といえば現代、映画にも登場し、若い人から見ても非常に魅力があり大きな存在となっている方です。

現代の市川海老蔵の魅力を歌舞伎関係者に聞いてみると何よりも華があるということだといわれます。
海老蔵が舞台に立つ、それだけでパッと舞台が華やぎ、観衆の目が惹きつけられる、さらにその目力のすごいこと、これはもう一般の方々も知ってのとおりです。

市川宗家代々に伝わる「にらみ」はこれを見ることが縁起のいいことといわれるほどで、確かに御利益がありそうな、力を頂けるような強さがあります。

海老蔵演じる迫力の景清では負けた景清が勝った側に乗り込んで、「私は死なない、どうだ、殺してみろ」という場面があります。
そこで海老蔵は負けたもののくやしさをおおらかに演じたいと、部隊の前に語っていました。

鎌髭の浮世絵、現代のポスターを見てみるとその迫力がわかる

鎌で切っても殺せない、そんな不思議なお話ですが、この演目の浮世絵を見てわかるように鎌で切るというシーンが大きな見所です。

また鎌髭の隈取も迫力があり、衣裳と顔、歌舞伎役者が見せる演技をとことん楽しむことができる迫力の舞台という事を、現代のポスターでもかんじることができます。

上演されることが少なかった演目をどんどん演じ復活させている現代の海老蔵が、市川宗家、成田屋としてこの先、また鎌髭などの演目をさらに魅力ある演目として世に出してほしいと願います。